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第1回JTUトライアスロン研究会参加

社団法人日本トライアスロン連合(JTU)で募集されていた「第1回JTUトライアスロン研究会」(“The 1st JTU Conference of Science in Triathlon”)に参加
主催者や発表者とは接点・利害関係がほぼ無いので、好き勝手に書きなぐったのが以下。
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http://www.jtu.or.jp/news/2011/111207-1.html
「第1回JTUトライアスロン研究会」開催要項

主 催:(社)日本トライアスロン連合(JTU)
専修大学社会体育研究所
企画運営:JTU情報戦略・医科学委員会

会 期:2011年12月17日(土)
13:00~18:00(当日のスケジュールPDF)

場 所:専修大学サテライトキャンパス
〒214-0014神奈川県川崎市多摩区登戸2130-2
(アトラスタワー向ケ丘遊園2階)
小田急向ケ丘遊園駅北口徒歩1分

対象者:大学生以上(18歳以上)のトライアスロン愛好者、トライアスロンに興味のある方、関わっている方など。

参加費:500円(通信、資料作成、研究会記録などの資料費)
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■開催意図

2011年3月24-26日に「第1回トライアスロン科学会議」がスペインで開催された。
日本ではトライアスロンの研究をしている人は皆無に等しいが、同じような催しを日本でも、ということで今回の開催となった模様。
2週間と短い準備期間のなか、主催者の人徳か、多方面の発表者を集めたうえ、参加費はわずか500円と大変リーズナブル。
僕はJTUのサイトで小さく告知されたタイミングで申し込んだので、受付番号は6番だった。その後、サイトトップで大きく告知され、最終的には25人程度集まった模様。

■アジェンダ

  1. 「トライアスロン研究の最前線 ―ウェットスーツの研究を中心に―
    JTU情報戦略・医科学委員、専修大学講師 富川理充
  2. 「トライアスロン・エリート選手のスイムパートにおけるレース展開―GPSによる軌跡分析から―」
    JTU情報戦略・医科学委員、文化学園大学助教 森谷直樹
  3. トライアスロンレースでのランニングパフォーマンスと生理的指標との関係
    国立スポート科学センター 本間俊行
  4. 「ランニングパフォーマンス向上のための自転車トレーニング―トレーニング効率の向上を目指して―
    筑波大学スポーツR&Dコア研究員 吉岡利貢
  5. 「運動に及ぼすBCAAサプリメントの影響」
    筑波大学スポーツR&Dコア研究員 石倉恵介

■「トライアスロン研究の最前線 ―ウェットスーツの研究を中心に―

JTU情報戦略・医科学委員、専修大学講師 富川理充

元競泳選手
トライアスロンに関する論文の数を pubmed と cinii で調査すると、緩やかに増えている
検索キーワードは triathlon と triathlon x {swim, cycling, run} を用いる(bike ではなくcyclingな理由は不明)

浮力は 体表面積と比例する

推進力と抵抗で均衡を保って進む

はやく泳ぐには?

  • 推進力を増やす
  • 抵抗を減らす

泳速 = ストローク数 x ストローク長
400M タイムトライアル は VO2Max と強い相関がある

・VO2Max:持久力の指標
・POMax:スプリントの指標(競泳の50M)

発表者は競泳出身でプールでは速いが、オープンウォーターでは遅い

★ウェットスーツを生かした泳ぎ方

手をぶん回して、ストロークピッチを上げる
Janet Evans のような泳ぎ方?

技術力のあるスイマーはウェットスーツのメリットをあまり享受できない
過去の研究では、フルスーツとロングジョンのパフォーマンスの違いは有意差はでていない
過去の研究では、水温やウェットスーツの記事の厚さなどがまちまち。
体脂肪の少ない選手ほど、ウェットスーツの効果は出やすい

★疑問

  • 海水で浮力が若干ある場合、どう影響するのか?
  • Konaなどで利用可能なスイムスーツの効果は?
  • 過去の研究はそれなりにはやい人を被験者に選んでいる。
    400Mが6分~8分のレベルの人だと、ウェットスーツの有無でどのようにタイムが違ってくるのか?
  • トライアスロン(OWS)専門の人はプルが強く、競泳の人(特にba)はキックが強い印象がある。
    過去の研究では、泳ぎの特性を加味しているのか?

★海外/日本のウェットスーツの違い
海外:吊るし主体
日本:テイラーメイド
海外ではテクニックをパワーでカバーする
フィット感が今ひとつでも、海外の選手は気にしない

★発表者の関連研究

かなりニッチ

J Sci Med Sport. 2008 Jul;11(4):417-23. Epub 2007 Mar 26.
Factors related to the advantageous effects of wearing a wetsuit during swimming at different submaximal velocity in triathletes.
Tomikawa M, Shimoyama Y, Nomura T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17387042

J Sci Med Sport. 2009 Mar;12(2):317-22. Epub 2007 Dec 20.
Relationships between swim performance, maximal oxygen uptake and peak power output when wearing a wetsuit.
Tomikawa M, Nomura T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18083064

■「トライアスロン・エリート選手のスイムパートにおけるレース展開―GPSによる軌跡分析から―」
JTU情報戦略・医科学委員、文化学園大学助教 森谷直樹

館山OWSやトライアスロンの選手権大会(天草、蒲郡、お台場)で選手にGPS端末をつけてもらい、スイムパートのログを取り、カシミール3Dで可視化。
ログ取得頻度は 1Hz または 5Hz から選択できるが、可視化ソフトウェアの性能要件により、1Hz(1秒に1回)を採用

GPSロガーはTransystems 社の TripMate 852(実売1万円程度)
http://www.transystem.jp/product/tripmate852.html


※研究費の都合から Garmin は使えなかったらしい。

Sunto は海外のトライアスロンのレースでリアルタイムで心拍数などと共に GPS ログを表示させていた。
→SRM はアイアンマン Kona やツール・ド・フランスでライブアップデートをしているが、参加者の多くはご存じない(興味ない?)ようだった。
→日本では電波法に引っかかるのでサービス提供できない

取得したログからは、アウトスタートがよいライン取り

特定の選手だけでなく、参加者全員のログを取らないと、集団のなかでどこを泳いでいるのかわからない(参加者の指摘)

Q:GPS 端末をつけて泳ぐのはOKか?
FINA (国際水泳連盟)は OK
ITU(国際トライアスロン連合) はルールを読む限りは問題なさそう。
オーストラリアで行われたトライアスロンの世界選手権では、車載カメラもOKだった。(夏に話題になった↓のことか?)

GPSログはキレイに取れるわけではなく補正が必要
New York Times でもGPSの精度問題が最近取り上げられていた。その記事の不正確さに対する DC Rainmaker さんのツッコミも必読。

僕は今年の湘南OWS10kmではGPSをつけて泳いだので、今回の発表では一番身近に感じた。

■トライアスロンレースでのランニングパフォーマンスと生理的指標との関係
国立スポート科学センター(JISS) 本間俊行

スピーカーはトライアスロンのコーチ向け研修に携わっている。
速さ = ピッチ x ストライド

レースで選手のストライド、ピット、ランパートのタイムを調査

全体の傾向としては

  • ピッチとランのタイムは相関なし
  • 身長とストライドの長さは相関なし(発表スライドにはなかったが、過去の調査によると)
    背が低くても、ストライドが長い人は長い。(170cmと150cmではストライドで大きな違いがあるように思えるが、、、)
  • ストライドの長さとタイムは強い相関
    同じ選手でも、成績のよかったレースでは、ストライド走法ぎみに走っている

スライドが長い選手は足の接地時間が短い。

なお、ピッチのプロットを見るかぎり、エリート選手は180-210/minute の範囲におさまっていた。

また、トラックを利用した乳酸カーブテストのタイムトライアル時の心拍数を元に、オリンピックショートレース中の最適な平均心拍数を割り出す事例(4mmolの負荷)も紹介されていた。

★疑問

  • スライドを見るかぎり、トラックでの測定は春、秋、冬と走りやすい時期に行われており、8月など真夏に測定したものは見当たらなかった。
    夏は心拍数が高く出るはずだが、その場合、どのように補正するのか?
  • ミドル、ロングの場合の適切な心拍数は?
  • 自分の印象では、心拍数は環境・体調など広い意味でのコンディションで大きく変動してしまう。
    自転車のワットのように、もっと使いやすい指標はないか?

■「ランニングパフォーマンス向上のための自転車トレーニング―トレーニング効率の向上を目指して―
筑波大学スポーツR&Dコア研究員 吉岡利貢

陸上がバックグラウンドの若手研究者。

テーマは、トライアスロンというより、バイクのトレーニングで走力を向上しましょう、というクロストレーニングの研究紹介。
ランは障害のリスクが高いため、ランの高負荷トレをバイクで置き換えましょう、というのが今回の発表のテーマ(と自分は理解)

bike/run の筋活動の違い
・Run → 伸張性と短縮性収縮運動の両方を利用
・Bike → 短縮性収縮運動のみ利用

短時間に高負荷を与えるトレーニング(プライオメトリクスなども含め explosive power を発揮するもの。sprint interval training)が無酸素能力だけでなく有酸素能力も向上させるという研究が最近流行っている
http://scholar.google.co.jp/scholar?q=sprint+interval+training

ランニング能力は
・VO2Max
・LT
・ランニングエコノミー
で多くが説明がつく。

10kmレースで日本人と世界トップ選手で VO2Maxは同じ位。
でも 10km 走らせると、2-3分異なる。→ エコノミーが違う

大学入学後、全然伸びていなかったランナーのタイムが伸びた
40KM/Week のランニングと 20km/Week + クロストレーニングで同等の成績をおさめられた(発表者)
トライアスロンは新しいスポーツだからか、トライアスリートは新しいことに興味を示してくれて、実験に協力してくれる
クロストレーニングでランを減らす弊害として、ランニングエコノミーが悪化するかもしれない

★自分メモ
僕は Chris Carmichael の約2年前のどこかの Web 記事をきっかけにエルゴメーターを使った超高負荷・短時間のバイクトレーニングでバイクの能力が向上したという研究を知った(クロストレーニングではない)。Chris Carmichael が執筆した The Time-Crunched Cyclist(2009)/Triathlete(2010) もこの研究も参考にして書かれている。ただ、自分がナナメ読みした3-5本程度の研究(High Intensity Training 系)はどれもワット、糖代謝、筋組成の変化をpre/postで比較するものであり、ランと絡めたものはなかった。その意味で、今日の発表は新鮮で一番楽しめた。

なお、”The Time-Crunched Triathlete” では今日の発表にあったような「バイクトレでランの能力を向上させるぜ!」のような記述はなかったように記憶している。逆に「特異性の原理」を重要視し、ランがはやくなりたければランをしろ、バイクでも同様というスタンス。さらに、ランだけをやれば良いマラソンと、スイム・バイクの後に走らなければいけないトライアスロンのランは全く別物という前提のもと、ラントレは単発ではなくブリックラン(バイクのあとランをする)するようにプログラムがくまれていた(気がする)。

スピーカーは自身の実例を元に、クロストレーニング主体のマラソン本を書いている。


毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80㎞で2時間46分! 超効率的トレーニング法 (ソフトバンク新書)

このタイトルは編集者がつけたのだろうけど、タイトルを見ただけでは、
・遅い人(たとえば4時間の人)が2時間45分で走れるようになったのか
・もともと2時間45分で走れた人がランの練習量を減らしても同じペースで走れるのか
区別がつかないな。

■「運動に及ぼすBCAAサプリメントの影響」
筑波大学スポーツR&Dコア研究員 石倉恵介
20年来のアイアンマン

アミノ酸(BCAA)の効果について
つくば在住の研究員らしく、先日行われたつくばマラソンでの実験結果(ダブルブラインド)を紹介。

  • 運動能力を高める効果はない
  • レジスタンストレーニングの筋損傷を抑制(マラソンの場合は大腿筋群)
  • 遅発性筋肉痛(DOMS)を抑制(筋損傷マーカー CK, LDH を利用)
  • 運動後のタンパク質代謝を向上

※実験で利用されたBCAAは企業から提供をうけたもの(企業名は忘れた)

現役の実業団トライアスリートに摂取サプリについて質問がいった
・できるだけ食事で栄養をとるようにしている
・体調が良くないときは、サプリの効果を感じる

Web 上にあるサプリ会社の BCAA 解説記事は以下

参加者の間では青いパッケージのBCAA が人気なようだった。

■17:10 懇談会 日本のトライアスロン研究について

参加者の自己紹介とか聞き足りなかったことの質問とか。
次回は選手もなにか発表してほしいね、とか。
参加者は、研究者、学生、実業団選手(トヨタ車体) 、JTU系組織の中の人、ショップ・コーチ、スポーツ外科医、一般愛好家(僕とか)と良い意味で雑多だった。

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■全体の印象

  • 1回目を考慮してなのか、競争が熾烈でないからなのか、身近で親しみの持てるテーマが多かった。
  • なんでも線形回帰で説明したがる発表者が多かった。
  • 突っ込んだ質問をぶつけてくる人はいなかった。
  • ノートPCを広げながら話を聞いている人は皆無に近かった(いつも僕が参加するようなIT技術系イベントとはノリが違う)
  • 自分はアームチェアアスリートだと再認識
  • 日程が合えば、第2回も参加予定

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Benefits of High-Gear, Lower-Cadence Cycling in Flat Triathlons

トライアスロンのバイクパートはレースによりフラットで直線的なコースと山岳系コース、コーナーの多いコースと様々。コースの特徴によって作戦も変わってくる。

といった書籍を Chris Carmichael と執筆している Jim Rutberg が、フラットコースでは貫性(momentum)がいかに重要かブログで説いていた

次回出場予定のコースはどフラットなので、概要だけ確認。

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Principle

Power =Aangular Velocity(cadence)  x  Force(gear)

low gear x high cadence vs high gear x low cadence

Strategy in Flat Triathlons

  1. スピードが乗るまでは高回転(90-100 rpm)でペダルを回す
  2. スピードが乗ったあとは、ギアを上げて、ケイデンスを落とす(80-85 rpm)。極力減速しないように注意を払い、貫性を活かして巡航
  3. T2 が近づいてきたら、ケイデンスを上げて(90-100 rpm)ランに備える

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