Monthly Archives: January 2012

『究極の鍛錬』ジョフ・コルヴァン著

アマゾンで評価が良かったので『究極の鍛錬』(“Talent Is Overrated“)を読んでみた。bio によると、著者の Geoff Colvin は長らく FORTUNE のコラムニストだった模様。

【目次より】
第1章 世界的な業績を上げる人たちの謎
第2章 才能は過大評価されている
第3章 頭はよくなければならないのか
第4章 世界的な偉業を生み出す要因とは?
第5章 何が究極の鍛錬で何がそうではないのか
第6章 究極の鍛錬はどのように作用するのか
第7章 究極の鍛錬を日常に応用する
第8章 究極の鍛錬をビジネスに応用する
第9章 革命的なアイデアを生み出す
第10章 年齢と究極の鍛錬
第11章 情熱はどこからやってくるのか



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一流の経営者、芸術家、スポーツマンは生まれ持った得意な才能をもった得意な人たちなのか?

一般に思われているような

  • 高いIQ
  • 記憶力
  • 経験
  • 生まれつきの特定の能力

が重要な要素ではないと前半部分で指摘。

後半では一流になるための旅路(究極の鍛錬)を Anders Ericsson を中心とした研究とその理由付けとして、子供時代は平凡だった人がいかに一流になったのか、ジャック・ウェルチ(GE)、ロバート・ルービン、モーツァルト、マイケル・フェルプス、ジェリー・ライス(NFL)などの実例を元に解説。
ただし、数学(一般の人が最も天才と結びつけそう)やスポーツよりも ビジネス方面に軸足を置いている。

究極の鍛錬(deliberate practice)は以下のような特徴を持っている(P.99)

  • 実績向上のため特別に考案されている
  • 何度も繰り返すことができる
  • 結果に関し継続的にフィードバックを受け取る事ができる
  • 純粋に知的な活動、肉体的な活動であるにもかかわらず精神的にはとてもつらい
  • あまり面白くない

究極の鍛錬の旅路は凡人にも道は開かれているとはいえ、天才への道は長く険しく、挫折要素はいたるところにある。

最後のほうでは、継続して鍛錬するための内部・外部的動機づけも触れらている。

究極の鍛錬は次のような人でないとこなせない(P.217)

  • 自分が選んだ分野で達人になろうと大きな投資を行う
  • より熟達した指導者を求める
  • 学びのなくなってしまうコンフォートゾーンを抜け出すために、自分を常に追い込む
  • 常に自己の限界に挑戦する

これを長年にもわたって継続実行出来る人が「天才」というわけだ。
マルコム・グラッドウェルの「天才!成功する人々の法則」と論調は同じ。

一方で、Science Of Sports を運営している Ross Tucker の最近の主張とは派手にぶつかる。

Sports science in the media in 2011: Training, talent, doping and Oscar Pistorius 

Ross によれば、一流になるスポーツ選手は子供時代から他と異なっている。トレーニングによりどこまで上に辿りつけるかは、才能次第と主張。

Training will get you to your ceiling, you’ll realize your genetic potential.  But will it win you a medal?  Only if you chose your parents right!

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この本は Florida State University の  Anderson Ericsson の研究がベースになっているので3つほど重要そうなものをリンク

 

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Mozart の作曲スタイルは残された正規の資料をもとに導出された研究結果と19世紀のロマンティシズムにあふれた史観が wikipedia にまとめられている

Mozart’s compositional method

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[NEJM]マラソンと心疾患の関係

The New England Journal of Medicine(NEJM) でマラソン関係の研究がたて続けに掲載された。

順に表面だけさらってみる。
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Cardiac Arrest during Long-Distance Running Races

N Engl J Med. 2012 Jan 12;366(2):130-140.
Kim JH, Malhotra R, Chiampas G, d’Hemecourt P, Troyanos C, Cianca J, Smith RN, Wang TJ, Roberts WO, Thompson PD, Baggish AL; the Race Associated Cardiac Arrest Event Registry (RACER) Study Group.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22236223

NEJM のブログが layman 向けに良い感じでまとまっている

http://blogs.nejm.org/now/index.php/cardiac-arrest-during-long-distance-running-races/2012/01/11/

New York Times のヘルス系ブログ Well でも著者のコメント付きで取り上げられている。

Heart Attacks Uncommon During Marathons
http://well.blogs.nytimes.com/2012/01/12/heart-attacks-uncommon-during-marathons/

Methods

2000年1月から2010年5月までにアメリカで行われたマラソン、フルマラソンを対象に心停止の clinical characterristics を調べたもの。

Results

面白そうな数字を並べると

心停止 の割合
59 /10,900,000

心停止後の死亡率
42(fatal) vs 17(survive)

男女比
0.90 / 100,000 vs 0.16 / 100,000

フルマラソンとハーフマラソンの比率
1.01 / 100,000(full) vs 0.27 / 100,000(half)

トライアスロン、大学スポーツ、トライアスロンとの死亡率の比較
0.39 / 100,000(half/full marathon) vs  2.28(collegiate) vs 1.90(triathlon)

生死を分けるもの
31のケースでクリニカルデータを追えている。
それによると、生存率を高める要因は以下の2つ

NYTimes で掲載されていた著者の一人 Dr. Baggish のお言葉を引用すると

The first is that exercise and running are healthy. But the second is that exercise is not completely protective against heart problems.

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Acute coronary thrombosis in Boston marathon runners
Albano AJ, Thompson PD, Kapur NK.
N Engl J Med. 2012 Jan 12;366(2):184-5.
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1111015
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22236223

運動は健康に良いけれども、冠動脈心疾患な人がうっかり Boston マラソンの出場資格を得るほどハードコアに運動に取り込んじゃうと、逆に心筋梗塞(Myocardial Infarction, MI)や突然死のリスクが増やすことになりますよ、ということで 2011 年の Boston マラソンを完走後にST上昇心筋梗塞(STEMI)と診断され、冠動脈ステントを挿入されたり、8日間入院する羽目になった3人の中年男性(45歳, 49歳, 55歳)の事例が紹介されている。

acute coronary thrombosis は日本語では急性冠症候群というらしい

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